第2章 認知症・物忘れ・ボケについての基礎知識
〜認知症・物忘れ・ボケについての正しい知識を深めよう〜

【201】認知症とは?認知症の基礎知識

介護士と高齢者

認知症とは?認知症の症状

認知症とは、認知機能が低下することで日常生活に支障が出てくる状態のことをいいます。 認知症というと「発症すると物忘れが激しくなって、 ご飯を食べたのに食べたことを忘れてしまうんでしょう?」と思っている方も多いのではないでしょうか? 実は認知症は物忘れだけでなく、妄想や幻覚、錯覚、暴力や暴言なども症状の1つとしてあります。 認知症の症状は、代表的な記憶障害である「中核症状」脳の障害によって生じる「周辺症状(行動・心理症状)」があります(以下の図を参照)。

周辺症状と中核症状

出典:認知症ネット「認知症とは?原因・症状・対処法から予防まで」より

https://info.ninchisho.net/mci/k10

中核症状には、認知症といわれて思い浮かべるような記憶障害や理解・判断力の障害、 場所や名前がわからなくなってしまう見当識障害などがあります。 ここでのポイントは、直前で起きたことを忘れてしまいやすい点です。 昔の古い記憶は残りやすいですが、進行が進むと過去の記憶も失ってしまいます。 具体的な周辺症状には、徘徊や興奮、暴力などがあります。 脳の障害によって生じる異常行動であるため、 人によって症状は異なり、接する人や時間によっても変わってきます。

認知症は加齢につれて発症確率が上がる

「認知症は高齢の方がなりやすい」という認識をしている方は多いのではないでしょうか? 30代や40代でも発症する「若年性アルツハイマー」も認知症の原因の1つといえる病気ですが、 認知症の発症確率は加齢するにつれてあがっています。 年齢でみる発症確率は、65歳未満を「1倍」とした場合、 65〜69歳で「1.5倍」、70〜74歳で「3.6倍」、75〜70歳で「7.1倍」です(参考:世界初・認知症薬開発博士が教える認知症予防最高の教科書より)。 認知症は、高齢者の場合、5歳上がるごとに2倍近く発症率があがってしまうのです。

認知症の進行が始まるのは「約20年前」から

認知症の進行は発症の20年近く前から始まるといわれています。 発症率の高い70歳前後で発症すると考えると、40代後半〜50代の時期に進行が始まるのです。 認知症発症の原因はいくつかありますが、 代表的なアルツハイマー型認知症を例に出すと「アルミロイドβ」という物質が脳に溜まることで認知症は進行していきます。 このアルミロイドβは、正常な脳ではゴミとして脳から排出されます。しかし、年齢を重ねるとともに排出機能が衰え、物質が脳に溜まって悪さをしていきます。この物質が溜まり始める時期が40代後半といわれています。 「認知症は高齢者がなる症状だから、40代〜50代の私たちはまだまだ大丈夫!」 と思っていると、後から後悔することになります。 認知症は予防・対処することで遅らせ、発症を防ぐことができます。 今からでも予防対策をしっかり進めていきましょう。

脳の変化は、発症の20年前から始まっている

出典: 浦上克哉「科学的に正しい認知症予防講義」翔泳社2021年出版,No.288から改編

認知症の進行が始まるのは「約20年前」から

「認知症は一度かかってしまうともう良くならない病気」というイメージがあるのではないでしょうか? 実際に、認知症の多くは一度発症すると、進行が止まることはなく、症状はどんどんとひどくなっていきます。 しかし、中には治る認知症もあります。 アルコールや薬物による疾患やビタミン欠乏による代謝性疾患、事故による脳外傷などによる認知症は、 治療や手術によって治すことができます。 また、アルツハイマー型認知症は、「アリセプト」という薬によって病気の進行を遅らせることができます。 このように「100%認知症は治らない」というわけではありません。 認知症になってしまっても、 早期発見によって進行を最大限に遅らせたり、解説したように、一部の認知症は治したりすることができます。 知識の1つとして、「治る認知症もある」ということを頭の片隅に覚えておきましょう。