第4章 認知症・物忘れ・ボケの予防・改善方法
〜運動・知的活動・コミュニケーション・サプリメントで認知症を予防しよう〜

【401】①運動による認知症対策

運動による認知症対策

認知症対策に運動が良い理由

認知症対策として運動がおすすめな理由はなんでしょうか? それは、認知症になるリスク因子の1つに運動不足があるためです。 高齢期(66歳以上)で運動不足の方は認知症の発症リスクが1.4倍に高まるのです。 運動をすることで脳を使い、神経細胞が活発になり物忘れやボケ、そして認知症予防につながります。 運動は神経細胞を活発にさせるBDNF(脳由来神経栄養因子)という物質も分泌されるため、認知機能を高めるといわれています。 また、運動不足だと、高血圧や肥満、糖尿病などの生活習慣病にもかかりやすくなり、抑うつ状態にもなりやすくなります。

どんな運動を続ければいいの?

今回は、「とっとり方式認知症予防プログラム」で推奨されている運動についてご紹介いたします。 「とっとり方式認知症予防プログラム」とは、科学的に認知機能の改善効果が実証されている運動・知的活動・コミュニケーションの 3つの軸からみた予防方法です。 「とっとり方式認知症予防プログラム」での認知症対策運動を行う時のポイントには以下の2つがあります。

ポイント 有酸素運動と筋力運動を行うこと

ポイント 身体と頭の体操を行うこと

詳しい運動について解説していきます。

「とっとり方式認知症予防プログラム」の運動|準備体操から整理体操まで

準備体操

準備体操は、 深呼吸 肩甲骨 前屈 ひねり運動 膝裏伸ばしの6つの運動を行います。

<準備体操のやり方>

  1. 大きく深呼吸することで胸の動きの改善とリラックスによる血流を改善させる
  2. 手を組んで前に伸ばし肩甲骨のストレッチをする
  3. 胸のストレッチでは、手を組んで後方に伸ばし胸を伸ばす
  4. 腕を前に伸ばし前屈運動をして腰や股関節を伸ばす
  5. 両腕を前に伸ばし上半身をひねることで上半身の柔軟性をアップさせる
  6. 片足を伸ばしつま先を触るように手を伸ばし維持させる

詳しいやり方は以下の図で確認してください。

準備体操

出典:浦上克哉「科学的に正しい認知症予防講義」翔泳社2021年出版,No1201、1212を改変

有酸素運動(+頭の体操)

有酸素運動はダイエットや肥満対策にも効果的な運動です。 とっとり方式認知症予防プログラムの中の有酸素運動は毎日続けやすく高齢の方でもできる運動が組み込まれています。 そして、「有酸素運動単体」と「有酸素運動+頭の運動」があるので、ぜひ挑戦してみてください。

<有酸素運動のやり方>

  1. 足踏み
    30秒間足踏みし、足の付け根の筋肉を強化します。ふらつく場合は椅子につかまるか、座ったまま行いましょう。
  2. 肩足立ち
    椅子に片手でつかまり30秒間片足を上げるのを左右1回ずつ行い、お尻と足全体の筋肉を鍛えます。30秒が厳しい場合は合計30秒か、座ったまま行いましょう。

<有酸素運動+頭の運動のやり方>

  1. 足踏み+拍手
    数を数えながら30秒間足踏みし、5の倍数で手を叩きます。これにより運動と頭の運動を同時に行います。慣れてきたら3の倍数に増やしてみましょう。
有酸素運動+頭の体操

出典:浦上克哉「科学的に正しい認知症予防講義」翔泳社2021年出版, No 1227No 1229の改変

筋力運動(+頭の体操)

有酸素運動の次は筋肉運動を行います。 筋肉運動も有酸素運動同様、筋肉運動単体の動きと頭の体操も一緒に行う動きがあります。

<筋肉運動>

  1. 膝伸ばし
    片足の膝を伸ばし体勢を維持し、太ももの筋肉を強化します。足を戻すときは3秒でゆっくり戻します。左右5回ずつ行いましょう。
  2. 椅子スクワット
    椅子に座って両手を前に伸ばし、椅子から3秒間お尻を浮かせます。お尻を下ろすときは3秒でゆっくり戻します。
  3. つま先立ち
    4秒でかかとを上げたり下ろしたりしてふくらはぎを中心に筋力を強化します。5回繰り返します。

<筋肉運動+頭の体操>

  1. サイドステップ
    左右交互に横にステップし、股関節の外側の筋肉とバランス感覚を鍛えます。8ステップを3回行います。ふらつく場合は椅子につかまるか椅子に座ったまま行いましょう。
  2. 足踏み+グーパー
    声を出しながら30歩足踏みし、片手は胸の前でグー、もう片方は手を伸ばしてパーをします(グーパー運動)。2つ以上の動作をすることで能力を鍛えます。
筋力運動+頭の体操

出典:浦上克哉「科学的に正しい認知症予防講義」翔泳社2021年出版, No 1237No 1258から改変

整理体操

整理体操は、準備体操で行った運動を順番に行い体をクールダウンさせます。

<整理体操のやり方>

  1. 肩甲骨
  2. 前屈
  3. ひねり運動
  4. 膝裏伸ばし
  5. 深呼吸

※それぞれの運動のやり方は準備体操と一緒

整理体操

出典:浦上克哉「科学的に正しい認知症予防講義」翔泳社2021年出版,No 1262から改変