第4章 認知症・物忘れ・ボケの予防・改善方法
〜運動・知的活動・コミュニケーション・サプリメントで認知症を予防しよう〜

【402】②知的活動による認知症対策

認知症対策に知的活動が良い理由

知的活動も物忘れやボケ対策として効果があります。知的活動とは頭を使った運動を指します。 知的活動は「記憶力」「注意力」「思考力」「判断力」などを鍛え、 日常生活の中で必要な認知機能を維持させることができます。 記憶力や注意力はイメージがつきますが、思考力や判断力は何かパッと思いつかない方もいますよね。 そこで知的活動によって鍛えられる8つの認知機能を以下にまとめました。

解説 具体例
視空間認知機能 空間の全体的なイメージをつかむ 時計が読めない、どこにいるかわからないなど
注意機能 1つのことを続けたり、複数のものから特定のものを見つけたり、同時に注意を向けたりする 交通標識を見落とす、電気の消し忘れなど
近時記憶 あることを記憶し、一旦そのことを意識しないようになった後にまた思い出す ご飯を食べたことを忘れる、自分でしまった場所を忘れて盗まれたと勘違いするなど
作業記憶 何かの作業を行うときに、頭の中に必要な情報を置いておく お風呂で髪や体をしっかり洗えない、家事や仕事をうまくできないなど
計算力 数を理解して、足し算、引き算、掛け算、割り算といった計算をする お釣りを間違える、無賃乗車・万引きをしてしまうなど
思考力 観察や記憶によって頭の中に蓄えられた情報を整理したり結合して新しい関係を作り出したりする 考えがまとまらない、うまく会話が成り立たないなど
遂行力 物事を計画したり、優先順位をつけて効率的に進めたりして、目的を成し遂げる 要領よくこなせない、仕事のミスが増えるなど
判断力 物事を正しく認識し、目的や条件に応じて必要なものを選ぶ 赤信号を渡る、必要のないものを買ってしまうなど

参考::浦上克哉「科学的に正しい認知症予防講義」翔泳社2021年出版,No 1303

具体的に認知症予防の知的活動はどんなことをするの?

上記で紹介した8つの認知機能を鍛えるための具体的な方法についてご紹介いたします。

視空間認知機能

まず、視空間認知機能を鍛えるには「塗り絵」や「貼り紙」などの図画工作がおすすめです。 塗り絵や貼り紙は、絵柄を見出し、塗り分けたり貼り分ける脳の動きが必要になります。 また、繊細な指先の動きをするためにも脳の良い運動になります。

注意機能

注意機能を鍛えるために、「文字探しゲーム」や「迷路」「パズル」などが良いでしょう。 これらは、間違いのないように注意深く作業を進めることで脳を使い、注意機能を鍛えます。

近時記憶

近時記憶のトレーニングは、「記憶力ゲーム」や「勉強」がおすすめです。 勉強は、暗記が必要なので、自然と記憶力を鍛えられます。集団で行う場合は、 神経衰弱などのカード合わせゲームも近時記憶を鍛えてくれます。

作業記憶

作業記憶を鍛えるには、「クロスワード」や「ナンバープレイス」などのパズルがぴったりです。 コツとしては、作業中できるだけ候補をメモせず頭の中で記憶しながら進めていくことで。 作業記憶を鍛えることができます。

計算力

計算力は、「計算問題」をすることが薦められています。 お釣りの計算や時間の計算など実用的な場面で使える計算をすることで計算力を維持できます。

思考力

思考力は「50音作文」で鍛えていきましょう。50音作文とは50音のそれぞれを頭文字にして文章をつくるトレーニングです。 他にも川柳や俳句、短歌なども感じたことを短く表現する練習として思考力を鍛えられます。

遂行力

遂行力は「手芸」や「折り紙」「楽器演奏」などで鍛えることができます。 これらは順番やタイミングを間違えずに進めていく必要がある作業なので、遂行力を鍛えるのにぴったりです。

判断力

判断力を鍛えるためには「パズル」が良いでしょう。 どこに何が当てはまるのかを判断しながら作業を進めていくため、判断力を鍛えや手先を動かすことで脳に刺激を与えられます。

認知機能とその知的活動